今日は七夕ですね
あいにく全国的に梅雨前線の影響で、佐賀・鍋島も宇都宮も曇り空みたいですケド…
七夕といえば牽牛と織女のおはなしですけど、ふたつに引き離されてしまった二人のものがたりがもうひとつあります
中国は唐の時代の詩人、白居易ってゆうおじさまが詠んだ七言古詩「長恨歌」っていうのがそれです
内容はこんなカンジ↓
唐の時代の皇帝、玄宗は永く美女を求め続け、ついに傾国の美女 楊貴妃を見出して後宮に迎えます
以来、楊貴妃の魅力の虜となった玄宗は国政をかえりみず、昼夜逆転で酒色にただれた日々を過ごします
楊貴妃の縁者を栄達させる人事をも繰り返し、人心が大いに乱れた結果、安史の乱が起こります
玄宗と楊貴妃は逃亡を図りますが、「乱の真因は楊貴妃なり」と家臣に詰め寄られ、これを殺すことを迫られます
抗しきれなくなった玄宗は泣く泣く楊貴妃に死を命じ、彼女は縊死(首吊り)させられます(ココまではおおよそ史実)
美妃を失い、さらに退位して国政に対する実権すらを失った玄宗は、失意の中、楊貴妃の面影を求めて道士(中国の民間信仰、道教を奉じて儀式を執るヒト)に楊貴妃の魂魄を捜索するよう命じます
永い捜索の末、楊貴妃の魂魄が仙界にあるコトをつきとめた道士は、この世ならぬ地へと赴きます
貴妃と対面し、玄宗の願いを申し出るも、貴妃は哀しそうな面持ちでやんわりとその願いを辞します
住む世界を別たれ、もはや仙界に住まう者となった貴妃には、もはや人界はあまりに遠いものなのだと答えます
貴妃は、かつて玄宗より賜った螺鈿の小箱と金のかんざしとを取り、かつての想い出の品を形見とするコトによって自らの深情を示したいと言います
貴妃は小箱から蓋をはずし、かんざしの一方のあしを折り、それらを自らのものとします
蓋のない箱と一方のあしを欠いたかんざしを道士に託し、貴妃は言います
「わたしたちの心が、この金や螺鈿の如くいつまでも堅いものであれば、別たれた二人もいつか再び逢える時もあるでしょう」
道士との別れ際、貴妃は玄宗に伝えてほしいコトがあると言います
以下、左が原文 右が書き下し文です
詞中在誓兩心知 (詞中に誓い在り二つのこころぞ知る)
七月七日長生殿 (七月七日長生殿)
夜半無人私語時 (夜半人無く私語せし時)
在天願作比翼鳥 (天に在りては願はくは比翼の鳥となり)
在地願爲連理枝 (地に在りては願はくは連理の枝とならんと)
訳はこんなカンジです
「二人だけが知っている誓いの言葉があります」
「それは七月七日の深夜、辺りに誰もいない時、長正殿で二人が交わした睦言」
「私たち二人が、天にあっては比翼の鳥となり、地にあっては連理の枝となれますように(今も、次の世でも、次の次の世でも共にひとつでありますようにと、わたしたちは誓い合ったのです)」
「比翼の鳥」とは雌雄つがいの鳥なんですけど、それぞれが片側づつしか眼と翼をもっていない、かなりヘンテコな伝説上の神獣です
天空を飛翔する時は雌雄の体がひとつに合わさって、どこまでも飛んでゆくのだそうです
連理も中国の説話集に記された伝説上の樹で、ある夫婦の墓の上に生えた相思樹の名前です
二本の樹は、下では根が交わり上では枝が交わって、ひとつの大樹になっているのだそうです
「男女の結びつきの極めて強いこと」を表す「比翼連理」という言葉はココから生まれました
七月七日長正殿のあたりのくだりは、何度読みこんでも切ない響きを醸し出すトコロですね
七夕のあの夜、二人で交わした睦言は「ずっといっしょにいようね」
1200年前も現代も、恋した二人が交わす睦言は変わるコトなく、そして多くの場合、その誓いが守られたコトはない
不本意に別たれてしまった恋しあう二人が、いつか再び巡り逢える時が来ますように



コメント
相変わらず博識やねぇ。ぱっと出てこないわ、もう。漢詩っておおざっぱだから昔から嫌いだった。自然の雄大さに対する表現くらいかな、評価出来るのは。そう思ってましたけど、少し興味がわいた。漢詩って雑いからっていう思い込みはやめようっと。
>ビバ☆メヒコさま
漢詩や漢文にはさほど詳しくはありません
中国のヒトたちの修辞技法って、大言壮語・針小棒大にすぎて、肉感を伴わなかったり共感しかねるのが多いですもんね
むしろあたしは、読み下し文を音読した時の心地よさがスキなんです
更に言うなら、大正~昭和中期くらいまでに日本に蔓延した、「難しい漢字を並べ立てて、精神主義にすぎない浮薄な論拠を堅牢確固にしたかのような錯覚に酔っていた帝国陸軍的表現」が、わたしの体質的に妙に適合しているのも挙げられるかな
漢詩よりは諸子百家のあたりの理屈っぽいのが、コドモの頃からお好みです
老荘と韓非子あたりが好きで、孔孟は大嫌い
ねじくれてるね…^^;
ひとつの世界が終焉を迎えるにあたって
世界の中に在るコトで自他を相対化し、己の輪郭を形作るのがヒトの在りようだ
レイバン メガネ
長恨歌 この世の涯てで 恋を歌うオカマの残骸/ウェブリブログ