魔法少女

<大森玲子:La La La 〜くちびるに願いをこめて〜>

日本のTVアニメが確立したジャンルのひとつに「魔法少女モノ」っていうのがあります

魔法のチカラを使って、主人公の少女が魅力的なオトナの女性や超常的な能力の持ち主になって大活躍するおはなしです

このジャンルに登場する主人公の少女は一様に、身体に「女」としての兆候があらわれる直前の段階の存在です

なんの取り柄もなく、女としてすら未満の存在であるハズの普通の少女が、魔法のアイテムに祈りを込めてくるくる舞い踊れば、美貌も魅力も能力も格段にスペックアップした「女」に化けられる… というこの種の魔法は、はなはだ蠱惑的です

「魔法」という言葉で覆い隠していますが、その言葉に込められているのは「初潮」とか「月経」とか「破瓜」というメタファーでしょう

性別的特徴すら判然としない時期にある「少女」という存在が、潜在的に内包している危ういほどに儚げな美しさは、極めて微妙なバランスの上に成立していて、あたかもそれは手のひらの上に舞い落ちた刹那、一瞬で解け失せてしまう淡雪の結晶の様ですらあります

現実においても、ある時期を境にして蕾がみるみるうちに花開いていくかの様に、目を見張るほど急速に、少女は「女」へと変貌を遂げます

この変化を一瞬で飛び越えて見せるのが「魔法」です

「魔法」という、月経や破瓜を象徴した一種の通過儀礼によって、一瞬にして少女は女へと変貌を遂げるのです

そして多くの場合、この種のおはなしの最終回では、魔法のチカラを手放したり失くしたりするコトで、少女は自身の未熟な身体と心を足掻かせて現実世界を歩いていくコトになります

時間というショートカット不可能な奔流に弄ばれながら、現実世界と対峙して数多の勝ちと負けとをその未熟な身体と心とで味わい、かつての自分なら魔法によって容易くかなえるコトができた理想の自己像に、少しずつ近づいてゆこうとする路を歩みだすトコロでエンディングロール

ちょっぴり切なく聞こえるエンディングテーマも情感を盛り上げます

<魔法のステージ ファンシーララ 最終回26話のラスト>

かつてのワタシも、ある意味では「魔法少女」のはしくれだったのかもしれません

ネットワークで接続された仮想世界の中にその身を置くと、自己を都合よく隠蔽し、都合よく装飾するコトが容易です

相手に伝えたくない情報にはマスク処理を施し、強調したい情報には装飾を施し、自己にまつわる虚実をほど良くこね混ぜて、その境目をぼかしてしまえば理想の自己像が一丁あがりです

これはある意味で、さきほど述べた魔法と同じ効果です

この魔法を自らにかけてしまえば、年齢も性別も社会的身分も経済格差も一足飛びに跳び越えて、コドモもオトナもお金持ちも貧乏人もエライひともそうでないひとも、一切が対等なフィールドに立てるのです

対等なフィールドに立って、その上で如何に行動するか… 理想の自己像が発露すべき点はソコにこそあります

力強く男性的に振舞うのが理想だったり、粘着質にハラスメントするのが理想だったり、誰かを論破することが理想だったり…

ワタシの場合は、このサイトの運営ポリシーでもあるところの「乙女設定」こそが理想でした

乙女設定っていうのは、基本的にカマトトです

知っていても「知らなーい」っていうぶりっ子ちゃんです

ウブで晩熟でけなげなのが乙女の基本です

リアルのワタシがきっとそうではないから、この呪わしい我が身を「乙女設定」という魔法で包みたかったのでしょう(半蔵サンなんかは「スズネがいちばん恐ぇ…」って見透かしてましたケド…><)

でも、確かにそれは魔法によって作り出された儚い幻影のようなモノであったかもしれないけれども、ワタシの内面の吐露であったのも事実でした

相手に伝わる自己像にはマスクと虚飾とがコーティングされてしまうのは不可避だとしても、年齢にも容貌にも肉体にも社会的地位や経済格差にも制約されない… いわば魂だけで勝負できるフィールドであるが故に、ソコでのワタシは自分の内実を可能な限り誠実に伝えよう心掛けました

であるが故に、主観であることを差し引いて考えても、ワタシは確かに乙女の魔法をまとってソコに在ったと確信します

2年前の夏、現実のワタシはどん底の状況でした

実家に逃げ帰って暗い部屋に引きこもり、其処で一日中泣いていました

悲惨な現実から逃避する様に、仮想世界にある美濃の稲葉山の街に所在無く佇んで、行き交う人たちをただ見つめていました

其処で、ワタシはあの方に拾われました

それからの日々、あの方の慈しみを受けてワタシは幸福とは何であるかを知りました

愛し愛されるという悦びを、悲しいコトですけど仮想の世界で初めて実感できたのです

にもかかわらず、2年前の12月4日、ワタシは自らの手で自分にかかっていた魔法を解除し、そしてその結果、慈しみ深いあの方の愛を失ってしまいました

神と楽園とを永遠に失い、それ以来、ワタシは乙女の魔法をこの身に纏えなくなってしまいました

日付は変わって昨日になってしまいましたが、12月4日という日はわたしにとってそういう日です

わたしが魔法を失くしてしまった日です

かつてブラウン管の中で跳びはねていたあの魔法少女たちは、魔法を失くしたその後、理想の自分に巡り合うコトが出来たのでしょうか

<大森玲子:しあわせなき・ぶ・ん>

コメント

  1. 通りすがりのチョンマゲ より:

    相変わらず小難しく生きてんなあ…
    あえていおう
    単細胞になるべきだと。
    飾ろうが何しようが自分は自分。仮想世界で変わった気がしたってログアウトすりゃ嫌でも現実が待ってんだから。
    だからスズネはスズネらしく本音がきけりゃあの時の会話は楽しかったと思ったよw
    難しくしか考えられねえならそれは仕方ねぇけどもう少し単細胞になるよう努力?(と言ってもいいのかも微妙だが)はしてもいいと思うよ!
    少なくとも今の半分に考えをショートカットさせなさいw
    楽に生きることの何が悪いw
    人生楽しめ!コレだ!

  2. すずね より:

    > 伝説の勇者サマ☆
    2年以上前のメールやチャットのログを見返してみてたんですケド、なんとソコでも勇者サマにおんなじコト言われてるんです><
    ぜんぜん成長できてないなぁ…(ってゆうか、コレって体質みたいなモノなのかしら{%顔モジヒヤッ(シェイク)hdeco%})
    せっかくの仲良しサンをうんざりさせちゃうのはホントにイヤなんだケドなぁ…
    でもね、あの時もやっぱり、半蔵サンは半蔵サンでしたょ{%ハート(ポヨンチカチカ)hdeco%}
    だから、今回いただいたコメントもなんだかとっても懐かしい感じがして、申し訳ない反面、じつゎすっごく嬉しかったのでした{%感謝(チカチカ)hdeco%}
    とってもめんどくさいヤツなのは充分に自覚した上で、「単細胞」めざしてがんばるから、良かったらこれからもおにいさんでいてください{%一言・ペコhdeco%}
    {%キラキラwebry%}ホントにとってもありがとうです{%キラキラwebry%}

  3. ビバ☆メヒコ より:

     魔法と言えば、夏目漱石の「こころ」に登場する魔法棒。石の様に固めてしまう魔法棒。う~~~ん、懐かしい。魔法棒という言葉の響きに高校時代感激した覚えがあるよ。
    ま、元気そうで何より。俺も苦しい生活を送っているけど、君も頑張ってくれよ。奈良からのエールじゃ!

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