ワタシノナマエハ… 立志編

前巻までのあらすじ

男の子がお兄さんに恋をして、女の子に脳移植されて男としてチームに参加するのだった(で、いいよね?)!

少女の身体で、想いをクチにできないまま、それでもけなげに秘めやかに、少女少年はお兄さんのお役に立てるようがんばります

目標の試合に勝利したら、「ホントは自分は女の子でお兄さんのコトをずっと前からお慕いしていました」と伝えようと、何度も何度も書き直したお手紙をたずさえて試合の日を迎えるのでした

試合には辛勝

お兄さんの最高の笑顔を見て、少女少年も心のソコから嬉しくなります

試合に勝ったコトはもちろんですが、お兄さんの笑顔のお手伝いができたコトが本当に嬉しいのです

学校への報告をすませ、帰路につくチームの面々… その一団の中には、お兄さんと少女少年がいます

控えめに、お兄さんからは少し離れながら、少女少年は盛り上がってるチームの仲間たちと家路を辿ります… お兄さんと二人きりになれる機会を求めて

ふと見上げれば、空にはまんまるのお月さまが少女少年の想いを見守るかの様に静かに、やさしく光っています

陽も暮れて、街の喧騒も少し遠く感じ始めた川べりで、一団はひとりの少女に出くわします

少女はお兄さんのクラスメートで、なおかつ仲良しさんで、つきあってるわけじゃないケドお兄さんの方も寄って来られてまんざらではない… そんな間柄のヒトです

その少女も、試合終了までお兄さんが集中を乱さないように、ずっと想いを押しとどめて今日のこの時まで待っていたのでした

少女はチームのみんなにお祝いの言葉を伝え、そして一団に加わって歩きはじめます… お兄さんのすぐ横について楽しげにおしゃべりしながら

少女少年は、おしゃべりに加わってお兄さんの横を歩けない自分がとても残念で、そして自分の対極のように振舞える少女をとてもうらやましく思いながら、少しうしろを歩いています

おしゃべりの時、少女が何かの拍子にお兄さんと瞳を交わしていたりするのを見ると、それだけで身も心も張り裂けそうです

やがてひとり、またひとりとチームメートが一団から離れてそれぞれの家路につき、お兄さんと少女と少女少年だけになります

そしてとうとう、三人はお兄さんの家の前にたどり着いてしまいます

やむなく少女も少女少年も、ごくごく自然なそぶりでお兄さんにさよならを告げて、それぞれの家への道を歩きだすのでした

のろのろ歩いていくつか曲がり角をまがって、さきほどの少女が充分に遠のいたと思えたあたりで、少女少年は意を決したかの様にいま歩いてきた道を振り返り、そしていそいでお兄さんの家へと引き返します

最後の曲がり角をまがってお兄さんの家の方を見ると、すでに少女とお兄さんが門のところに立ってお話しているのが目に入ります

少女少年はあわてて曲がり角の塀に身を隠します

少女も少女少年もおなじ考えだったのです

そして少女少年はほんの少し出遅れてしまいました

やがて少しすると、二人のさよならの声が聞こえますが、さっきと違って少女の声はとてもはずんで聞こえます

お兄さんの声も、こころなしかさっきよりも明るく嬉しそうに聞こえます

門が閉じられる音、玄関が閉じられる音、遠のいていく少女のはずんだ足音、それらが風にのって聞こえてきます

それらの音はすべて、絶望的な調べで少女少年の耳奥に響くのでした

少女少年は空を見上げます

さっきまでまんまるだったお月さまは、今は滲んでへんてこな形になっていますが、それでも少しもさっきと変わらず、やわらかく静かな光を地上に投じています

滲んだお月さまに向けて少女少年はなにごとか、声にならない声でつぶやきます

「ワタシハ アナタノコトガ ダイスキデス」

宵闇が邪魔をしてはっきりとは見えないから、ひょっとしたら間違っているのかもしれないけれど、それでもやっぱり、あたかも微かな声で歌うかのように、見えなくなってしまったお兄さんに囁きかけるかのように、少女少年のくちびるがそのかわいらしい言葉をなぞっているのが見えるのでした

お兄さんのお部屋の明かりが点いては消え、消えては点き、やがて窓奥に静寂と夜のとばりが訪れたころ、少女少年は想いを達することなく、再び家へと歩きはじめます

だいぶ傾いてしまいましたが、空にはあいかわらずへんてこな形のお月さまが薄いライム色に滲んで淡く光り、少女少年の足元をやわらかく照らしています

おぼつかない足元で、時々つまづきそうになるたびに少女少年はにじんだお月さまを見上げ、そして声にならない声で小さく歌う様につぶやきます

届け先を失ったカタチのない言葉は、どこに行くあてもなく誰の耳に響くこともなく、急に肌寒さをました夜風にとけ、何処へともなく流れていきます

次号へつづく…^^;

<伊藤咲子:乙女のワルツ>

来週の「風魔の小次郎」は…

負傷した霧風に迫る雷電の凄絶な秘技! 「 薔薇の葬列 」の巻だ!!

コメント

  1. 千葉っぷ より:

    「リンかけ」のあとは一部ファンの間では最高傑作と称される「風魔の小次郎」ですか?
    なるほど・・・
    って、車田作品の宣伝になってますね。
    次回予告では、意表をついて
    「すすめパイレーツ」(江口寿史)
    いや、ジャンプではないけれども
    「マカロニほうれん荘」(鴨川つばめ)
    でお願いします(笑)
    おいおい、オマエら幾つだよ・・・
    @銀座

  2. すずね より:

    千葉っぷサマ☆
    あら、こんなに早くコメントいただけるとゎ思いませんでした^^;
    ホントはね、今週の予告は「サーキットの狼」でいくはずだったんですケド、覚えてるヒトいるかなーって思って二の足踏んじゃったのでした^^;
    次回はなにでいこうかなぁ…ってゆうか、次回もコレの続編なのかなぁ…^^;

  3. 千葉っぷ より:

    ふっ・・・池沢さとし か?
    ランチャ・ストラトス欲しかったなぁ~。
    そうそう、当時、スーパーカーチャリンコも
    流行ったよなぁ~。
    ライトがカパって開くんだよな。
    懐かしい??
    でも二の足踏むのは
    「ドーベルマン刑事」ではないか?
    それともサンデー連載だった
    刑事つながりで
    「おやこ刑事」とか・・・

  4. すずね より:

    千葉っぷサマ☆
    なつかしいのは~
    自転車のスポークのとこにつけるプラスチック製のストローの切れ端みたいなヤツです^^;
    あれ、いっぱいくっつけてたなー^^
    サンデー系だったら「サバイバル(うわっ、いきなりコレか^^;)」とか「ただいま授業中(一文字愛チャン かわいかったなぁ♪)」とか「男組(クロマティ高校って池上遼一センセイが描いてるんだと信じてました^^;)」あたりがあたしのストライクです^^
    もちろん「まことちゃん」は絶対ハズせません☆

  5. ビバ!メヒコ! より:

     スーパーカー関連ではずせないのは、カウンタックマンだ!何という番組だったかなぁ。スーパーカーばっかりの番組で、スーパーカークイズなどというマニアックを超越した狭すぎる範疇のクイズを子ども達が兄弟で答えるコーナーがあり、最後は930対BBみたいなコース上での対決があって、最後にカウンタックマンの歌で終わった記憶があるなぁ。「ビュンビュンビュンビュン とばせ!ビュンビュンビュンビュン とばせ!僕はカウンタックマン」ちゅう歌だったよなぁ。覚えてない?
     ユニクロで、サンデーのキャラTシャツが売り出されてます。グワシTシャツは手に入れましたよ。では、サバラ。

  6. すずね より:

    ビバ!メヒコ!サマ☆
    それは、その名もズバリ「スーパーカークイズ」ですね( ̄▽ ̄)v
    ♪~ボクのあこがれス~パ~カ~(MCでランボゥギィニッ!) ♪~ス~パ~カ~(MCでフェラリディーノゥッ!)
    って主題歌のサビの部分は今でも歌えたりして…^^;
    排気音きいて、それが何のクルマか答えられるコなんかがいて、あたしみたいにスーパーカーブロマイドとかでしか詳細をしらないビンボーなお子サマには手が出ない問題なんかも出題されてました^^;
    アラブの石油王が財にあかせてスペシャルオーダーした「カウンタックLP450S」とか、世界に3台しかない「ランボルギーニ・イオタ」とかゎコドモにも分かりやすいレアリティでしたケド「ランボルギーニ・ウラッコ」とか「エスパーダ」あたりになると、貧困な感性のアタシには全く理解不能でした><
    今でもやっぱり大好きなのは「ディノ246GT(黄色限定です!)」だなぁ^^

  7. ビバ!メヒコ! より:

    ディノはエンツィオが、夭逝した息子を偲んで開発した車というエピソードは、今もなお心に深く刻まれています。
    そ、そ「僕の恋人、僕の憧れ、スーパーカー」でしたね!LP450Sって知りませんでした。LP400とLP500Sの間に存在したのですね。イオタは格好良かったですね。ミウラも。

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